犯罪予告もどきで、気軽に逮捕しちゃいけない理由
先のエントリでは、
- 犯罪予告もどきが法的に問題となり得るのは、実際に「危ない」かどうかだよ。
- 文脈とか見て現実に危ないなら逮捕すべきだよ。
- 危なくないと判っているのに、無理な解釈で逮捕する・させるのは、めちゃくちゃだよ。
という事を書きました。
主に先のエントリに納得できない人向けに他の観点でちょっと書いてみます。
このニュースは、赤の他人の逮捕、それも流行のネタで見事馬鹿をやった他人の逮捕です。これは、秀逸な話題のタネであり、面白がる人が多いのも無理はないかもしれません。
その中には「容疑者に非はあるから、逮捕されて当然」とか「実際に逮捕したんだから何を言おうが容疑者が悪く警察が正しい」というような暗黙の認識をもってる人もいるように見られます。これは丁髷の中世の時代や独裁国家ならともかく、現代の近代社会にはそぐわない考え方です。
いろんな人がいろんな事を自由に考える事が出来るのが民主主義です。何が「正しい」という事もいろんな人がいろんな考え方を出来るのが、独裁国家と異なるところです。
といっても、カオスでは困るので、この社会にはおかしな人を抑える2つの抑制力があります。
- 社会には常識があり常識を外れた人は非難されます。これは法律ではありません。
- さすがにこのレベルは守ろうよという最低限のルールを作り、それを強制するのです。これが「法律」です。逮捕は、法律に基づいて行います。
ですから、民主主義の法治国家では、
- ある国民が非常識な事をやってる、という事と、
- 警察がそいつを逮捕すべき、という事は、
一見、似ているようで、はっきり区別して考えなくてはなりません。
さらに、社会の公平のために、法の適用も公平でなくてはいけません。AさんとBさんが同じ法律違反をしたら、仕打ちはどちらにも公平でなくてはいけません。
ですから、この容疑者を非常識のアホと非難するのは普通のことですが、法律を根拠としないで逮捕を正当化する、
> わざわざこんな事をするのが大人として足りないのは間違いない。
この部分で終了だと個人的には思いますが。
のような考えとか、もしくは法律の他の適用例とのバランスを無視して逮捕を正当化する、
活きた小女子をクールボックスで小学校の敷地に持ち込み生きたまま七輪で焼いて食べるとしたらそれはそれで迷惑かと思います。
というか不法侵入。
のような考えは、中国や北朝鮮ではともかく、法治国家の日本では勘違いなのです。
あと、
実際に反抗を起こす可能性が0.00000001パーセントでもあれば対策をとって置かないといけないのが警察なんだし、
これは無茶な話です。警察はとにかく国民の安全を実現するのが仕事です。小学生ではないのですから結果が重要です。こんなほとんど意味がないことを「がんばってる」なんて言っても、言い訳になりません。それより安全にもっと役に立つ事をして、安全を実現する義務があります
*1。そういう非合理なことを警察に社会的に強要するのは問題ですし、それにたいして事なかれ主義で愚かなことをする警察にも問題があります。
*1:ちなみに、0.00000001パーセントは、その辺で適当に人を捕まえてその人が将来殺人を犯す確率の方がの数千倍大きいはず(殺人事件発生件数と日本の人口を比べれば判る)。この可能性で対策が必要なら、全国民を公安にマークさせないといけない