言論弾圧を愉しむマスコミとはてな村民

始めに断っておくが、自分は田母神氏の社会的知能に大いに疑問を感じるし、認識も見解も異にする。過去エントリを見てもらえば、すくなくともはてな村民が見下して嗤うネトウヨという仮想人種には当てはまらない事は理解して貰えるだろう。

政府見解と異なる論文を投稿して更迭された田母神俊雄・前航空幕僚長(60)の処遇は3日夜、定年退職という異例の形で決着した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081103-OYT1T00526.htm

田母神氏は「これほどの大騒ぎになるとは予測してなかった」としながら「政府見解に一言も言えないのでは北朝鮮と同じだ」と述べ、国会への参考人招致があれば「積極的に応じる」と述べた。

http://www.asahi.com/national/update/1103/TKY200811030159.html

田母神氏は政府の意向により更迭され、職を退いた。件の論文はチラ見した程度だが、論文の体すらなしていないお粗末な物だった。しかし、問題はそこではない。個人が職務内容ではなくその思想により排除された事だ。政府による個人の思想信条による差別以外の何物でもない。しかし、マスコミ、そしてはてな村民の反応は、思想差別ではなく田母神氏への批判が多勢を占めている。しかもそれは、論文のレベルの低さではなく、今回差別されて職を追われた、まさにその思想そのものをターゲットにしている*1


違うというなら、こういう思考実験をしてみるといい。仮に政府見解が何かの間違いで「あれは米国に仕組まれやむを得なかった自存自衛の戦争であり、進出はアジア各国に有益であった」という物だったとして、田母神氏がこれに異を唱えて「あれは侵略戦争だった。アジア各国へは多大な損失を与えた」と述べ、それにより更迭され職を追われたとしたら、マスコミとはてな村民はどう反応するだろうか。


彼がしたのは幕僚長としての見解発表ではなく、私人として民間公募に応募したにすぎない。文民統制とは職務遂行に関する指揮系統の話であり、本来私人の活動に及ぶものではない。ただ、理想と現実にはギャップがある。現実の政治が、この状況に手を打つ事を理解しないわけではない。しかし、あくまでそれは許されるべきでない、批判の中強行せざるを得ない類の形になるべき物である。アメリカ政府が、「あやしげな」有色人種を超法規的にグァンタナモに数百人監禁して日夜拷問しているのと、同じ類の物である。


にも関わらず、マスコミもはてな村民の多くも、政府を批判するどころか、自らの意見と異なるという理由で政府の言論弾圧を積極的に支持し、その問題に全く無自覚に見える。心理学では、人は自分と意見を異にする者に対して事実認識から論理まで極めて不寛容になる傾向を持つ事が定説となっていると言う。その意味で、大して考えずにブクマする程度の村民は、自然とは言えるが、自覚的に自らを律する姿勢が求められよう。


そしてなにより悪質なのは、もう少し考えているはずのマスコミとダイアラだ。魚拓を取っていないので今は残っておらず正確な文を再現できないが、読売は当初、定年退職という処遇について、「明確な規律違反がないので懲戒手続きに出来ず、田母神氏は責任を取らない」として批判していた。思想信条差別礼賛のみならず、意見の異なる者へは法治主義やルールも無用という発想には言葉を失う。またダイアリでも、あえてidやURLは示さないが、アパホテル耐震偽造まで持ち出して、ただたた田母神氏を貶めるだけの愚劣なエントリもそこそこのアクセスを稼いでいるようだ。大して考えない村民に対して、ただただアクセスを集めるために愚かな事を吹き込む姿勢は、軽蔑に値する*2


公正な歴史観を求める姿勢を持っているなら、意見の異なる者についても公正な判断を行えるよう、自覚的にあるべきだろう。

*1:論文のアホさは、ネタにされてはいるが明らかにメインディッシュではない。思想のメインディッシュがなければ取り上げる価値もない下らないものだ

*2:この人物は、読者があまり考えない事をいい事に、論理破綻のスタンドプレーによる他者攻撃を繰り返して、そこそこの信者を集めているようで、まさに唾棄すべき人物だ