日本を新型インフル渦に陥れる毎日新聞の無責任体制

以下の記事を読んで、どういう認識を持つだろうか。

新型インフル:メキシコからの直行便、成田着 感染者なし

メキシコからの直行便が29日朝、成田国際空港に到着した。防護服やマスク、ゴーグル、手袋を身につけた検疫官7人が機内に入った。携帯用のサーモグラフィーで高熱の乗客がいないかを確認し、症状の有無などを記入する質問票を回収した。発熱のあった男性は他の乗客が降りた後、機内後方に移され医師の診察を受けた。男性の周囲の乗客20〜30人も、検査結果が出るまで機内にとどまるよう要請された。簡易キットによるインフルエンザ検査では陰性と判明。午前8時過ぎ、検疫作業は終了した。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090429k0000e040024000c.html


様々な感想はあるだろうが、「この便の乗客はシロ。彼らはウィルスを日本に持ち込まなかった」という認識を持ったとしても、この記事では仕方がない。なにしろ、見出しで「感染者なし」と言い切っているのだから。


インフルエンザはウィルス感染性の病気だ。記事に惑わされず常識で考えれば、ウィルス感染性なら潜伏期間もあるだろうと思いが及ぶはずだ。実際、今回の新型インフルではないが、過去の豚インフルエンザの症例では数日の潜伏期間があったようだ。

Four days before getting sick, the patient visited a county fair swine exhibition where there was widespread influenza-like illness among the swine.

発症する4日前に、患者は豚の品評会を訪れており、そこでは豚の間でインフルエンザ様の病気が拡がっていた。

http://www.cdc.gov/swineflu/key_facts.htm


そのため厚労省でも、発症が無くても帰国後10日は自宅待機を要請している。

流行地からの帰国者については症状を認めなくとも、10日間は自宅で待機いただき、外出はなるべく控えていただきます。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html


空港の機内検疫では、すでに発症している患者を除いて、そもそも感染者を見付ける事など出来ないのだ。

渡航歴や接触歴がある方で、ブタインフルエンザの感染が強く疑われる場合においても、発症前に診断できる検査はありません。
帰国後10 日以内に、症状を認めた場合には保健所に相談してください。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/090426-02a.pdf


それなのに、毎日新聞は見出しで国民にこう呼び掛ける

感染者なし

http://mainichi.jp/select/today/news/20090429k0000e040024000c.html


まったく誤った情報を報道した結果、空港の機内検疫を通過すれば大丈夫という誤った空気が醸成され、潜伏期間だった感染者が自重せずにラッシュの電車やイベントに赴いてウィルスをばらまいたらどうするのか。また帰国者の周りの者も、空港の機内検疫を通過した事を感染なしと誤認して注意を怠って感染したらどうするのか?


なにより、パンデミックは、情報が交錯して人々をパニックに陥れかねない重大な危機だ。そこでなにより重要なのは正確な情報だ。それなのに、多くの国民が信頼してしまっているマスコミが、このような重大な錯誤を平然とばらまく事がどういう事なのか、彼らにその自覚はないようだ。

記者のミスが問題なのではない。組織の問題だ。

記者とて人間であり、ミスはするだろう。だが彼らが作っているのは小学校の学級新聞ではない。多くの国民が信頼を置き、実社会に甚大な影響をもたらす大新聞なのだ。「だって間違えたんだもん」などと子供のような言い訳が通じない、通じてはならないのだ。


そのために、報道機関は記者による自己チェックはもちろんのこと、念入りな他者によるチェックを必ず経なければ記事が表に流せない仕組みにする。組織で仕組みを作る事で個人のミスを結果に残さず、組織として記事の質を保証するものだ。そのための組織であり、それが組織としての信頼のはずだ。


にも関わらず、毎日新聞はそれをしていない。ウィルスに潜伏期間がある事など一般常識の範疇であり、他者チェックが入っていれば必ず見付けられるはずのものだ。それなのに、この記事は出た。万一、これで他者チェックがされているとしたら、むしろこんな常識レベルの知識も持ち合わせない不適格者をその任にあてている、組織の責任を問わない訳にはいかない。


毎日新聞はつい先日も、デタラメなニセ発電装置を称賛・宣伝する記事を載せた。

電磁力を応用した高効率な小型発電装置を、相模原市の「ソフォス研究所」代表の木下博道さん(74)が開発した。
(略)
これまでの計測結果によると、回転速度によっては、始動用モーターの消費電力の100〜1000倍程度も発電可能。また始動に必要な電力は400ワットモーターなら乾電池(単3)1本でも足りるという。

http://d.hatena.ne.jp/kentultra1/20090321#1237628758

これも、中学理科レベルの「エネルギー保存の法則」という常識を持っていれば、必ず見付けられる誤りだ。記者本人がどんなにうっかり算だとしても、他者チェックがあればNGになるはずの記事だ。にも関わらず、この記事は載った。


断っておくが、自分は毎日新聞などまったくウォッチしていない。たまたま何かの機会に目にする事がある程度だ。それなのに、立て続けにこんなにデタラメ記事が目に入ると言う事は、毎日新聞の記事はまったくノーチェックのデタラメ記事が溢れていると考えざるを得ない。

うわべの取り繕いしかしない、腐敗組織

毎日新聞の失態と言えば、去年明らかになった「WaiWai」の低俗デタラメ記事の問題だ。「WaiWai」事件は、当初静観を決め込んでいた毎日新聞社が、ネット主婦によるスポンサー電凸により実害が出始めてから対策を打ち、仕舞いには自社内で調査と総括を行ったと自称する記事を発表した。事態の沈静化しか考えていない、突っ込みどころに溢れる誤魔化し記事であったが、その問題のひとつにして重要な問題をここで指摘しない訳にはいかない。

「WaiWai」(略)は、▽原稿が妥当かどうかをメディア倫理に照らして精査するデスク機能がなかった

毎日新聞本紙の場合、紙面審査委員会や「開かれた新聞」委員会などを通じて、記事内容は常にチェックされるが、MDNには、そのようなシステムはない。

英文毎日編集部における「WaiWai」の編集方針の議論が決定的に欠ける中、歴代の上司は、自らの媒体の内容を把握するという基本を怠った。

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_05.html

出てきた総括は、毎日新聞の問題を「WaiWai」の特殊事情に矮小化させる事に必死なのだ。「WaiWai」以外はきちんとしていて、ほかはそんな問題はない、とトカゲの尻尾切りの形になっている。


原稿が妥当かどうかを精査するデスク機能が、毎日新聞社にあるのなら、なぜこういうデタラメ記事が続けざまに出てくるのか。委員会を通じて記事内容が常にチェックされるなら、どうして一般常識以下のトンデモ記事が連続して出てくるのか。上司が自らの媒体の内容を把握しているなら、どういう理由で記者のミスや暴走が野放図になっているのか。


自称調査総括記事は、毎日新聞社は反省しているようにも見えるが、実態はまったく違う。

ポータルサイトライブドア」のニュース欄トピックス上に掲載される毎日新聞への批判記事について、毎日新聞側がこれまで複数回にわたり、ライブドアに対してトピックスへの掲載を中止するよう圧力をかけてきたことがこのほど、PJニュースの取材で明らかになった。独立したメディアの編集権を侵害するという、報道機関としてはあるまじき毎日新聞言論弾圧体質が浮き彫りになった。

http://news.livedoor.com/article/detail/4131245/


国民の信頼をあざむきあざわらう、こういう組織が多くの国民の信頼を得て今日も無責任な記事を報道している。

おまけ

とはいえ、さすがに直ぐ訂正されると思われるので、証拠として魚拓を取っておく。
http://s03.megalodon.jp/2009-0430-0200-22/mainichi.jp/select/today/news/20090429k0000e040024000c.html

追記

日経本紙、および読売に同様の誤解を招く見出しがあったと情報を頂きました。

これら各紙にも、反省と責任あるチェックを希望します。