毎日の報告が、目くらましで肝心の点を誤魔化し責任逃れをしている件

ようやく、報告が出てきた。そこそこの分量があり、読んでいくと「ほう、ちゃんと調べたんだなぁ」となんとなくウヤムヤな気持ちになって、「これで一件落着かな」という気持ちになってしまいかねない。

「変態ニュース」毎日新聞3ページに渡り謝罪 外部の警告放置「深刻な失態、痛恨の極み」

http://www.j-cast.com/2008/07/20023815.html

J-Castまで釣られる始末。

だが、とんでもない。それは孔明の罠だ。落ち着いてよく読めば、この報告が内容的に論外であって分量による目くらましの責任逃れでしかない事が明らかになる。

 皆様からいただいた多くのご批判、ご意見や内部調査で分かった問題点、有識者による「開かれた新聞」委員会の指摘を踏まえて再発防止のために次の措置を講じることにしました。

 8月1日付で「毎日デイリーニューズ」を新体制に組み替え、新編集長の下で9月1日からニュース中心のサイトに刷新します。新たに社説や「時代の風」など著名人による評論を翻訳して掲載し、海外の日本理解を深めるべく努めます。同時に西川恵専門編集委員を中心にベテラン国際記者らによるアドバイザリーグループを新設し、企画や記事の内容をチェックする体制をとります。

http://www.mainichi.co.jp/home.html

上記に引用した措置は、当然だ。イカレタ記事を発信していた組織を改善しないなんてあり得ない話なのだから、これは大前提に過ぎない。重要なのは、そこから先だ。

問題の報告で重要なのは、

  1. 今回の件に関連して、潜んでいた問題をどう対処するのか
  2. 原状回復(起こした被害を、可能な限り元に戻す事)
  3. 潜んでいた問題を含めて、それぞれの責任をどうするのか。

今回の件に関連して、潜んでいた問題をどう対処するのか

毎日新聞は、WaiWaiの件に潜んでいた問題を自らこう総括している。

■チェック機能に欠陥
■品質管理体制の不在
■記者倫理の欠如
■英文サイトへの認識不足
■批判への対応鈍く

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_05.html

この総括にも漏れがある気もするが、それはまずは置く。上の4つは、上記の措置が対処と言う事だろう。では、一番最後の「批判への対応鈍」への対策はどこへ行ったのか?

 昨年10月、米国在住の大学勤務の日本女性から内容を批判する英文メールがデジタルメディア局に届いている。(略)
 今年3月にも国内在住という人から日本語で「WaiWai」の内容に疑問を投げかけるメールが届いたが、同様に顧みられることはなかった。(略)

 この2本のメールの内容は、記者だけでなくデジタルメディア局内の他の人にもメールで知らされた。そのリストには局長や局次長、部長ら幹部も含まれていた。

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_03.html

昨年10月から、外部指摘を放置して、2chで大々的に叩かれ出してやっと思い腰を上げたわけだ。それなのに、その対策がないとは一体どういう事なのか?

さらに、毎日は、こうした自浄作用の無さに対する担保として、

社外の有識者でつくる第三者機関「『開かれた新聞』委員会」に見解を求め紙面で報告します。

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0707.html

のように、社外有識者の「『開かれた新聞』委員会」を置いているようだが、その頼みの綱の委員が言う事はこうだ。

 私は数年前からネットの負の側面に警鐘を鳴らしてきたが、今回の件はネット社会の落とし穴がどこに隠れているかわからないことを示唆するものだ。ただ、失敗に対する攻撃が、ネット・アジテーションによる暴動にも似た様相を呈しているのは、匿名ネット社会の暗部がただごとではなくなっていると恐怖を感じる。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_08.html

自浄作用がなく外部指摘をずっと黙殺して、ネットで叩かれないと動かなかったと言う問題を前にして、頼みの綱がいうのは「ネットが悪い」。「ネット・アジテーション」に問題があるとして、今回それがなければ改善されなかったのだから、今回の件では功を成したわけなのだが、結論は「ネットが悪い」。

これは、もう救いようがないのではないか?改善できる理由がないではないか。被害を被る人も出るかも知れないが、責任の大きさを考えて、こんな改善の見込みがない危険な会社は解体するのが妥当ではないだろうか。


原状回復(起こした被害を、可能な限り元に戻す事)

今回の報告で、全く前面に出てきていないうえに、申し訳程度に「判明すれば、事情を説明」と受け身的曖昧記述。この手の受け身的な曖昧記述は、実質的な明確な対策対処を取らないと言う事だ。ほかは詳細をダラダラ書いて、「お詫びします」という火消し的文言ばかり前面に出して、肝心の被害の回復をないがしろにしているのは、結局の所、この報告の主たる目的が、単なる自己保身である事を雄弁に物語っている。


潜んでいた問題を含めて、それぞれの責任をどうするのか。
経緯報告の中では、問題の現役員を含めた上司の不作為の問題に言及している。すなわち、現役員・現社長には名目だけではない、実務的責任があった事を示唆している。

検証踏まえ2人追加処分

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_06.html

発覚時だけでなく、歴代の担当幹部も処分というのは評価出来るが、内容は「役員報酬20%(1カ月)返上」。彼らの責任感はその程度と言う事だ。

そしてなにより、強く批判されていた「昇格処分」についてまったく触れず、また昇格の取り消しも、処分の強化もなし。

さらに言えば、もっとも強く批判された「社長昇格処分」の対象である朝比奈氏について、この報告は全く切り込んでいない。調査班とて社員であるから、結局、この報告は、社内力学の産物でしかなく、最高権力者として君臨する社長は無傷で高笑いと言う事だ。

結局の所、この報告書は、毎日には自浄作用がなく、責任感もなく、救いがない危険な組織であると言う事の証明となっているのが読み取れる。

結言

とまあ、ちょっと厳しめに追求したが、これは、私が尊敬してやまない、社会正義を厳しく追及する新聞社の顰みに倣ってみたものだ。その新聞社の名前は、毎ナントカと言ったが、失念した。