神舟7号の件。物分かりのよい「よい子」より、素直なアホの子と彼らに向き合う専門家

「ネタにマジレスして」とか言うのは、「逃げます」という宣言だし、「負けです」という宣言ですからね。
真面目な議論に「メタレベル」でなにか言って「偉くなった気になる」のは単にダメなだけです。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1223108611

いまさら「ネタにマジレス」なんてのは、逃げで負けに決まってるわけで、全く同意。そう言う連中は恥ずかしい。しかし、今回の騒動そのものについて、自分はかなり肯定的に受け止めている。


というのは、追い込まれたら恥ずかしい逃げを打つ連中はともかくとして、自分でもよく解らないままむやみに「公式発表」を盲信するのは決して褒められる事ではないし、専門家と一般人の間でなかなかない熱い対話*1が生まれたと考えるからだ。もちろん、後者は松浦氏の尋常じゃないマジレス努力の賜物と言える。ごく一例を挙げても

資料を一つアップします。

「●デブリ状物体の移動についてその3」では、明確な回答を出せなかったので、自分が考察に使ったデータを一部公開します。

動画像から問題のデブリが写った画像をフレーム単位で切り出し、連続したファイル名の高画質JPEGファイルにしたものです。画像系に強い友人に作成してもらいました。

http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/10/post-8e6d.html


まあ、ここまでやるかという…。今後の別の事例にまで同様の事を期待は出来ないが、まずは今回は彼の努力で生まれた成果である事は間違いない。


総合的に考えれば「まさかそんな大胆な事はしないだろう」とは判断しつつ、これまでの中国のネタを踏まえると、総合判断とは別に、万が一でもネタだったらとの一抹の期待は抱いてしまう心情は、自分は理解出来る*2。疑いを招くのは、信頼を築けていない中国にも責任はある。


彼らが「捏造」説に傾いた動機には中国に対する見下しが少なからずあると思われるが、彼らを叩く者達の動機にもやはり同様に彼らに対する見下しがあるように見える。彼らを叩いてる者達も、松浦氏の回答のすべてを最初から理解・認識していた訳ではないだろう。宇宙開発のような専門的な事に、一般人はもともと大した知識や認識がなくて当たり前だ。その上、情報ソースもルートも極めて限られている。今回については中国にとっての総合的メリットなどを考える事で判断可能な事象ではある。しかし、情報が限定的ソース/ルートのみで、さらに一般人ではその内容を判断するだけの知識がないとすれば、発表を無条件に鵜呑みにするのは健全な態度とは思わない。彼らを叩く者達やその周辺から、その事を指摘する声があまり見られなかったのは残念だ。これも、『「メタレベル」でなにか言って「偉くなった気になる」』人達の一種ではないかと。


専門家の仕事は、専門フィールドの中で事を成し遂げる事はもちろん、一般に向けてその知識を広めるのもまた重要な仕事だろう。ましてライターとなれば後者こそ使命である。啓蒙と言うのを嫌う人も居るが、一般人が知らなくて当たり前の事があるのは仕方ない。その意味で今回の騒動は水伝とは全く性質が異なる。今回の件は、松浦氏によるよい啓蒙事例と捉えられるべきだと思う。

*1:対立も対話のひとつっつー事で

*2:総合的な判断までそっちに傾くのはどうかと思うが、まあそこは平均的総合知力とか、本エントリの主張とは他の問題