焚書を始めたAmazonにその見解を質すしたけど…

Amazon.co.jpでは既に取り扱いを禁止している児童ポルノを想起させる商品に加え、以下に該当するようなアダルト商品の取り扱いを、今後中止することにいたします。また発見した場合は直ちにカタログの削除を行います。
・違法性、残虐、虐待をテーマにした商品、または著しく嫌悪感を催すような商品
―「残虐表現」「ドラッグ」「鬼畜系」「食糞」「獣姦」等の残虐表現を含むもの


また商品登録の際に下記の文言を「キーワード」に登録することを禁じます。
―「レイプ」「強姦」「輪姦」「暴行」「乱暴」「凌辱」「虐待」「残虐」「食糞」「獣姦」「ドラッグ」「鬼畜」
その他著しく残虐または嫌悪感を催すような表現


上記に該当する商品の登録や、キーワードの登録があった場合は商品を削除させていただき、また削除にも拘わらず同じ商品を再度登録されたり、禁止されたキーワードを再度登録されたりといった状況がある場合、今後の取引をお断りすることもございますので、予めご了承くださいませ。

http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51404352.html

日本でもネット販売で圧倒的な支配力を誇るAmazonが、日本向けサイトであるAmazon.co.jpにて上記のような通知を一部の出版社・ソフトウェアメーカーに送ったとのこと。


Amazonは、Webショッピングの世界王者として君臨するかたわら、1Click特許などで自身以外のWebショッピングの発展を阻害し、さらに特許をネタにして商売敵から小銭をゆすり取って見せしめを行うなど、支配力の維持拡大に努めてきた*1。その甲斐あってか、弱小リアル書店は次々に廃業に追い込まれ、Web書店のデファクトとも言える地位を築いている。

もちろん、消費者により受け入れられるサービスをより安く提供する存在が、そうでない古い存在を駆逐するのは資本主義社会の鉄則だ。それによってシェアを拡大する事はむしろ賞賛に値する事だ(特許はそうではないが)。しかし、デファクトとも言えるほどの支配力を持てば、相応の社会的責任を負うというのが現在の社会的共通認識だろう。


書店は表現物によって利益を上げる存在である。その書店、とくに大規模書店にとっての社会的責任と言えば、何を差し置いてもまず表現の自由を担保し、出版物を差別なく流通させることではないか?それなのに、いったいこれはどういう事なのか。


一見しただけでは、これらの制限自体が社会貢献であるかのように誤認する人もあるだろう。しかし、よく見て頂きたい。たしかに、ここに掲げられた行為の多くは、それを実際に行えば被害者が発生する犯罪行為である。そのため、それら実際の行為の実録作品を制約するというなら話は通じる。しかし、Amazon.co.jpがやっている事はそうではない。現実にAmazon.co.jpが制約しているのはフィクションであり空想であり、被害者もいなければ犯罪でもない、表現作品の規制である。Amazon.co.jpがやっている事は、表現の世界に公然と差別を持ち込んでそれを市場支配力によって社会に強制する事に他ならない。

さらに、これが社会貢献どころか、差別以外の何物でもない証拠が、上記に「食糞」「獣姦」のキーワードが並んでいるという事実だ。これらには被害者はいない。これらを禁ずる事は、本国アメリカのキリスト教的観念をベースとした、価値観の強制と性嗜好差別でしかない。「同性愛」がここに並んでいないのは、ひとえにゲイの活動家達の活躍の賜物に過ぎず、それがなければ当然のようにここに並んでいただろう。キリスト教徒でなくてもそれらに嫌悪感を抱くと言う人もも多いだろう。では、この制約は、そのような消費者を保護するための措置だろうか?否、それは全くあり得ない。

なぜなら、Amazon.co.jpにおけるすべての商品はユーザが自ら選択して表示させるのであり*2、コンビニのエロ本のように、嫌悪感を抱く人の意に反して目に入る事は元々あり得ないからだ。いうなれば、完璧なゾーニングが既にされている訳だ。それなのに、いまさら禁ずるというのは、嫌悪感を抱く人達に取ってのメリットにはならない。第一、「健全」な商品だけで商売をしたいなら、アダルト商品の一切の取り扱いを止めればいいではないか。「正常」な嗜好のアダルト商品だって、望まぬ女性にとっては嫌悪感の元である。それなのに、一部の嗜好のみを禁じて、アダルト商品全般は取り扱いを続けるというのが、差別でなくていったい何であろうか。


と言うわけで、Amazon.co.jpに対して、その見解を質すメールを送る事にする。市場支配力と社会的責任、表現の自由に対する認識を問う。回答が来たら、本ブログで紹介する。

Amazon.co.jp PRご担当者様


御社のサービスをいつも便利に使わせて頂いております。
さて、御社の取引先に対する行為に関して以下のような情報が流れております。


http://www.adachi.ne.jp/users/showaben/NewFiles/nikki.html によりますと、
御社は『「残虐表現」「ドラッグ」「鬼畜系」「食糞」「獣姦」等の残虐表現を含むもの』の取り扱いを中止し、取引先に対して、
『「レイプ」「強姦」「輪姦」「暴行」「乱暴」「凌辱」「虐待」「残虐」「食糞」「獣姦」「ドラッグ」「鬼畜」その他著しく残虐または嫌悪感を催すような表現』のキーワード登録を禁止し、該当の商品やキーワードの登録を繰り返す場合には取引停止を行う旨、通知された事になっております。


ご多忙のところ恐縮ではございますが、これに関し、以下について御社のご見解を頂きたく、よろしくお願いいたします。



(A)上記の様な通知を御社が行ったという事は事実でしょうか。

(B)(A)が事実でない場合、上記ページで紹介されている商品を、Amazon.co.jpで取り扱い中止にした理由は何でしょうか。また、その理由への該当有無の基準・ガイドラインはどのようなものでしょうか。

(C)御社は、書籍と始めとした流通において、他の追随を許さない圧倒的なシェアを持つ企業であると存じます。御社は、企業として法令遵守以上のなんらかの社会的責任を果たすべきとお考えでしょうか。

(D)(C)に関連し、巨大な御社が取り扱う商品を選別する事によって、作品の社会への流通に大きな影響を及ぼす事に関してどのようにお考えでしょうか。

(D)御社は、表現の自由、および差別についてどのようにお考えでしょうか。それと、御社の社会的責任に対するお考えはどのように関係するでしょうか。

(E)Amazon.co.jpは、一般商品とは明確に分離された形でアダルト商品を取り扱っています。そのうち、上記のような特定の性嗜好の作品のみを排除する理由を教えて下さい。

(F)上記の禁止条件には、被害者が発生しない・犯罪ではない性嗜好が含まれています。それらを排除する理由を教えて下さい。

(G)上記の禁止条件には、同性愛や不倫が含まれていません。それらが排除されない理由を教えて下さい。


ありがとうございました。上記の情報が誤りである事、または、御社が特定の嗜好に基づく差別を廃して、社会と共に発展される事を希望致します。
なお、本メールに対するご回答は、その有無を含めてWeb等にて公開させて頂きますので、あらかじめご了承をお願い致します。

(追記)回答が来た

Amazon.co.jpにお問い合わせいただき、ありがとうございます。

現在当サイトでは、取扱商品の見直しを進めております。今回お問い合わせいただいた件につきましては、サイト上で検索いただけない場合に、取り扱い見直しの対象商品となっていることが考えられます。

現時点では見直し段階のため、お客様よりいただいたお問い合わせについて、具体的な返答は控えさせていただきますが、このようなご意見をいただいたことは担当部署に報告させていただきます。

Amazon.co.jpにお問い合わせいただき、ありがとうございました。

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Amazon.co.jp カスタマーサービス ○○
http://www.amazon.co.jp/

※不明点の確認やお問い合わせはこちらのページからが便利です
http://www.amazon.co.jp/help/
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即日のお約束回答でした。

(追記)問題点:私企業は法に触れなければ差別を推進してよい?資本の論理は、マイノリティを救える?

ブコメで、過剰反応じゃ?との声もあったので補足。確かに企業は営利のための私的な存在であり、法に触れなければ違法ではない(当たり前だけど)。


しかし、その辺のちっこい店のヤジが何かするのと、圧倒的なシェアで業界に君臨するAmazonがやるのとでは社会的な実影響の規模が全然違う。シェアに応じて、(法ではない)道義的な意味で社会的責任があると考えるのはおかしいだろうか。おかしいというなら、なぜAmazonは、この機会に同性愛系書籍も一緒に排除しなかったんだろう。そんな事をしたら、同性愛の活動家から差別的企業として社会的責任を問われるからではないだろうか。つまり、Amazonは社会的責任がある事を自覚しつつ、声を上げぬ弱いマイノリティの差別を敢行しているわけだ。


自由競争の経済なのだから、Amazonが勝手に売り上げを落すだけという論理もある。しかし、差別されるのは常にマイノリティであり、Amazonへのダメージはまったく軽微だ。だから、Amazonはこのような差別行為を敢行しているわけで、資本の論理で差別的企業が淘汰される事はない。きちんと批判の声を上げなければ、差別行為はし放題なうえ、業界圧倒的No.1がそんな具合では下手をしたら業界に差別フォロアーが現れないとも限らない。

*1:ちなみに、1Click特許は数年を経て結局そのほとんどが無効とされた http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20359020,00.htm

*2:リコメンドもあるが自分の選択をベースとしており、かつアダルトは別枠

言論弾圧を愉しむマスコミとはてな村民

始めに断っておくが、自分は田母神氏の社会的知能に大いに疑問を感じるし、認識も見解も異にする。過去エントリを見てもらえば、すくなくともはてな村民が見下して嗤うネトウヨという仮想人種には当てはまらない事は理解して貰えるだろう。

政府見解と異なる論文を投稿して更迭された田母神俊雄・前航空幕僚長(60)の処遇は3日夜、定年退職という異例の形で決着した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081103-OYT1T00526.htm

田母神氏は「これほどの大騒ぎになるとは予測してなかった」としながら「政府見解に一言も言えないのでは北朝鮮と同じだ」と述べ、国会への参考人招致があれば「積極的に応じる」と述べた。

http://www.asahi.com/national/update/1103/TKY200811030159.html

田母神氏は政府の意向により更迭され、職を退いた。件の論文はチラ見した程度だが、論文の体すらなしていないお粗末な物だった。しかし、問題はそこではない。個人が職務内容ではなくその思想により排除された事だ。政府による個人の思想信条による差別以外の何物でもない。しかし、マスコミ、そしてはてな村民の反応は、思想差別ではなく田母神氏への批判が多勢を占めている。しかもそれは、論文のレベルの低さではなく、今回差別されて職を追われた、まさにその思想そのものをターゲットにしている*1


違うというなら、こういう思考実験をしてみるといい。仮に政府見解が何かの間違いで「あれは米国に仕組まれやむを得なかった自存自衛の戦争であり、進出はアジア各国に有益であった」という物だったとして、田母神氏がこれに異を唱えて「あれは侵略戦争だった。アジア各国へは多大な損失を与えた」と述べ、それにより更迭され職を追われたとしたら、マスコミとはてな村民はどう反応するだろうか。


彼がしたのは幕僚長としての見解発表ではなく、私人として民間公募に応募したにすぎない。文民統制とは職務遂行に関する指揮系統の話であり、本来私人の活動に及ぶものではない。ただ、理想と現実にはギャップがある。現実の政治が、この状況に手を打つ事を理解しないわけではない。しかし、あくまでそれは許されるべきでない、批判の中強行せざるを得ない類の形になるべき物である。アメリカ政府が、「あやしげな」有色人種を超法規的にグァンタナモに数百人監禁して日夜拷問しているのと、同じ類の物である。


にも関わらず、マスコミもはてな村民の多くも、政府を批判するどころか、自らの意見と異なるという理由で政府の言論弾圧を積極的に支持し、その問題に全く無自覚に見える。心理学では、人は自分と意見を異にする者に対して事実認識から論理まで極めて不寛容になる傾向を持つ事が定説となっていると言う。その意味で、大して考えずにブクマする程度の村民は、自然とは言えるが、自覚的に自らを律する姿勢が求められよう。


そしてなにより悪質なのは、もう少し考えているはずのマスコミとダイアラだ。魚拓を取っていないので今は残っておらず正確な文を再現できないが、読売は当初、定年退職という処遇について、「明確な規律違反がないので懲戒手続きに出来ず、田母神氏は責任を取らない」として批判していた。思想信条差別礼賛のみならず、意見の異なる者へは法治主義やルールも無用という発想には言葉を失う。またダイアリでも、あえてidやURLは示さないが、アパホテル耐震偽造まで持ち出して、ただたた田母神氏を貶めるだけの愚劣なエントリもそこそこのアクセスを稼いでいるようだ。大して考えない村民に対して、ただただアクセスを集めるために愚かな事を吹き込む姿勢は、軽蔑に値する*2


公正な歴史観を求める姿勢を持っているなら、意見の異なる者についても公正な判断を行えるよう、自覚的にあるべきだろう。

*1:論文のアホさは、ネタにされてはいるが明らかにメインディッシュではない。思想のメインディッシュがなければ取り上げる価値もない下らないものだ

*2:この人物は、読者があまり考えない事をいい事に、論理破綻のスタンドプレーによる他者攻撃を繰り返して、そこそこの信者を集めているようで、まさに唾棄すべき人物だ

エリート集団をも抹殺する『あいさつ』の組織論

コーチ・エィ(東京・千代田)の中島克也常務から「あいさつ促進に『真剣に』取り組んでいる組織がある」と紹介された。東京海上日動火災保険の埼玉自動車営業第二部だという。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20081028/318007/

仕事で東京海上日動火災のオフィスに行った事がある。異様な雰囲気だった。元記事曰く、優秀なエリート集団の戦場であるはずのオフィスには、幼稚園や小学校を思わせる「いつもニコニコ、気持ちよくみんなであいさつをしましょう(正確な文言は忘れたけどこんな感じ)」との張り紙。それが掲示板だけならまだしも、あちこちの普通の壁に貼られている。そして、廊下で合う人合う人みんな逐一「コンニチワ!」「コンニチワ!」。


エリートのエリートたる所以は、指示を受けて言われた事をやるのではなく、個人があらゆる問題についてそれがどうあるべきか、そして自分がどうすべきか、自立・自律して考えて自発的に乗り越えてゆく事が大前提ではないのか。これは、何もエリートだけではなく、自由主義社会の社会人として当たり前の事と思われる。それを仕事にも発揮するかどうかは個人の自由だが、経営側としては、従業員にできるかぎり仕事にそれを発揮させる事が普遍的な課題であるはずだ*1。従業員ひとりひとりを、言われた事を言われたまま行うガキの使いから、自ら考える自律したプロ集団にするのが、少なくとも新卒採用型の日本企業には普遍的な経営課題であるはずだ。


それなのに、「いつもニコニコ、気持ちよくみんなであいさつをしましょう」。そして、一昔前の自販機やATMのように発生される「コンニチワ!」。
この異様な状況を「目指すべきあるべき姿」であると、エリート達は自らの頭で考え、ここに至ったのだろうか。もしそうであれば、少なくともわたしは彼らをエリートとはとても呼べないし、そうでなければエリート達はいったいどうしてしまったのか。上から提示された「あいさつ」はとにもかくにも実現されたが、自らあるべき姿から考えるエリート達はどうしてしまったのか。


最初の引用部に出てきたコーチ・エィというのは研修屋さんのようだ。記事内容から察するに、おそらく東京海上日動の「あいさつ」はここの研修によるものなのだろう。大人数の行動を見事に変えたという意味で、確かにここの研修屋としての実力は高いのだろう。しかし、これでどのような経営課題が解決されたのだろうか。これを成功事例として嬉々としてマスコミに紹介する発想には重大な欠落があるように感じずにはいられない。

若い男性社員が外出時にドアの前でくるっと振り向き、「行ってきます」と頭を下げる。するとオフィス内の部員から一斉に「行ってらっしゃい」と声がかかる。

これを元記事では「かなりすがすがしい光景」と評している。「あいさつ」という目に見えるところに意識を置く人ならそう感じる人も少なくないのだろう。しかし、自分はそこに潜む、エリート達を抹殺するような個人への抑圧に、読んでいて身の毛もよだつ思いだったし、そう感じる人もまた少なくないだろう。互いに仕事の子細も把握してる数人のチーム内の話ならともかく、仕事も行き先もなんの事情も知らない人がいったいどういう思いで「行ってらっしゃい」を言って他人を送り出すのか。そこには自己目的化した組織目標にただ従うだけの無思考と同調圧力を感じずにはいられない。


コーチ・エィのWebサイトには研修テーマとして、トップに「企業理念の浸透」が掲げられている。経営者の思いは理解出来る。それらは重要な経営課題ではある。しかしその前に、ワンポイントを偏重して組織を異様な価値バランス観に落とし込み、なにより会社そのものである組織の構成員をスポイルする事で実現してなんの意味があるだろうか。異様な内部世界を作り上げた、シャクティパットのライフスペースが元々研修屋であった事を、この記事を読んで自分は改めて思い出す。

*1:逆に、仕事をマックジョブにして従業員に期待せずに捨て駒として扱うと言う対処ももちろんある。しかし、マクドナルドといえど本社勤務の"総合職"にまでそれを適用はしまい

はてブは2ch化すべきであり、1000万ユーザへの道はそれしかない

id:shi3zはてブ偏重に苦言を呈し、また村周辺でちょっとした話題になっている。元記事には、幾つかの話がごっちゃに書かれている。

普通の読者にウケる記事は、はてブされにくい。センセーションがないからだ。逆にはてブされやすい記事は、刺激が強すぎて商業誌には載せにくい。
(略)
はてなブックマークのユーザは学生や技術系の社会人が多いような気がする。ただ、平均的な技術レベルは高くないので、技術でいえば初心者や新入社員、大学生向けのノウハウに票が集まる。

http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20081010/1223596246


後者には、

有用性って言ったって、「誰のために有用なのか」が大事なわけだから(略)。それぞれ知識レベル、興味レベルは違うわけで。「論文なんか見ても解らない人」にとっては「日本人が適当に端折って解説した方」が有用なわけで。論文見てもわかんねえんだから。わかる方がいいじゃん。わかった分だけプラス。プラスになっただけ有用。

http://d.hatena.ne.jp/takerunba/20081010/p3

などの反論が出ていて、ブコメにも同様の反応が見られる*1


だが、前者への反応はあまりないようだ。前者と後者は、見方によっては相反する問題提起のハズだが、その関係をid:shi3zは明示していない。


ここで、自分は、id:jkondoたこつぼ発言や1000万ユーザ拡大路線の時の話、はてブ衆愚化論争の時の話を思い出す。はてブの質・レベル・ユーザ層は、繰り返し話題になっていて定番ともいえそうだ。自分ははてブの側から、この問題に対する考えをここで書いておきたい*2


詳しい者より初心者が多いのが当たり前。

本屋のコンピュータ書籍コーナーにに行っても、「初めての〜」「〜入門」などという本がやたらスペースを占有している。どんな分野だってこのピラミッド構造になっているのが基本だろう。入門書に価値がないというわけではない。それだけでは足りないという事が問題なはず。

個人個人は、自分が興味がある分野については初心者じゃない。

大抵の者は大抵の分野に詳しくないが、特定分野では大なり小なり人より詳しい。誰でも何かしらに興味を持っていて、その系統については一般の人より、ちょっとあるいはすごく詳しい。その詳しい分野については、より濃い適当なレベルの記事を読みたいし話題にしたいもの。

しかし、数を単純に足し合わせると、それらは埋もれてしまう。

興味ある分野は人それぞれだから、当たり前。ただ、コミュニティの偏りによって一部の分野は、濃くても対応読者が十分な数が居て上位には来るけど、その分野以外には意味がない。さらに偏りが過ぎる記事ばかり上位に来るとキモくて一般ユーザが敬遠離散するかも。一方で一般的な薄い話題ばかり持て囃されては、貴重な濃いネタを見つけてくる者にも負の動機付けを与えてしまう。

ソーシャルなんだから話題になってナンボ。興味ある分野の濃いネタも話題にしたい。

人が集まるところに人は集まる。情報源としての利用もいいが、やはりコミュニケーションが存在するから楽しいし新しい発見がある。はてブでは濃い記事についてそれができず、そういうブログをRSS講読して自分でチェックするしかなく、その分野・レベル的によいネタも盛り上がりにくい。

解決のために、2chを志向すべき

犯罪予告しろとか、氏ね氏ね言えと、草生やせという話ではない。2chというとVIPやニュー即+などのイメージばかりが先行するが、実態はそうではない。2chには数百の板がある。アクセス数は先述の板に比べるべくもないが各種の専門板もあり、さらにアクセス数が限られる話題は、板内のスレッドが板の代わりを担っている。アクセス数の多寡は時間の流れで調整される。VIPでは一瞬でスレが流れていき、寺社仏閣板ではスレ内で日単位の間隔でレスがやりとりされる。ユーザは、同時にいくつも自分が興味ある板に生息し、時間の流れの調整を自分で対応して、いくつもの興味と自分のレベルに合った話題にありつく。

はてブはこれらを見習って、一般に人気の薄いネタも様々な分野の濃いネタもユーザの嗜好に合わせて話題として浮かび上がらせる方法を実現するべきだ。理想的にはユーザを多重にクラスタ化して、ユーザの嗜好に合いかつ話題にできるhotentryを提供する仕組みを提供すべきだ。クラスタの中では方言的ネタや独自が生まれるような。

今のはてブユーザはコア・古参系クラスタに活かしつつ、これによって全方位的に多くの分野・文化に射程を広げユーザを巻き取っていく。最終的には同じはてなの中で、

はてブ利用者が1000万人を超えた場合のブックマークコメント欄予想。

  • とっても面白い日記でした!ブクマしますねっ!!
  • ブクマありがとうございま〜す☆お返しブクマポチっとな♪
  • 無断ブクマ解除禁止です>< マナー違反は駄目ですよ!!
  • 最近コメント無しのはてブが増えてます〜 ブクマ逃げはご遠慮くださいm(__)m
  • はてブにだけコメントを残してブログにコメントをしない人は何を考えているんでしょう。マナーがなってない人が増えすぎですね!!
  • 毎日のブクマありがとうございます!皆さんのおかげで日記が2000はてブ超えました!(*^-゚)v これからもどんどん応援ブクマお願いしますね☆
  • 読む前にブクマお願いします。読んだあとのコメントは50文字以上で。コピペのコメント・あいさつは最悪のマナー違反です。
http://d.hatena.ne.jp/RPM/20080611/1213189940

のような文化のクラスタが、コア・古参系と重なりの薄いところで共存する形が出来上がってくるだろう。要は棲み分ければよいし、そうしなければ現在のユーザベースから1000万ユーザ到達などありえない。はてブは広告を見るところ技術系への偏りを強みとして影響しているようだが、クラスタごとにそのような営業ができるようになるのが望ましい。

クラスタSBM2chに対しても大きなアドバンテージがある。例えば、クラスタはアメーバのように適応的に変化できるが、2chの板はトップダウンで用意されるため柔軟な変更が難しい。また、2chのアクセス規模が小さい板ではスレッドはデフォルトでsage進行されるなどフロート式掲示版の機能は生かされていない。そしてなにより、2chの専門板の各レスも濃いとはいえ、はてブのターゲットに含まれる専門ブログは往々にして数段その上を行く。

現状では、「お気に入り」がこの役を担っているが、如何せんサポートも弱く、あくまで入力であってhotentry的な「場」が提供できていない。これはこれでよいが、願わくは、今回のはてブのリニューアルが、この俺の考えた夢の超合金はてブ実現の足固めであればよいのだが。

*1:id:shi3zは誤解を招く書き方でこう反論されているが、はてブのために濃い記事をやめて薄い記事を書くのは良くないといいたいのだと思うが

*2:この考え自体も、もう定番化していそうな気がするが…

神舟7号の件。物分かりのよい「よい子」より、素直なアホの子と彼らに向き合う専門家

「ネタにマジレスして」とか言うのは、「逃げます」という宣言だし、「負けです」という宣言ですからね。
真面目な議論に「メタレベル」でなにか言って「偉くなった気になる」のは単にダメなだけです。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1223108611

いまさら「ネタにマジレス」なんてのは、逃げで負けに決まってるわけで、全く同意。そう言う連中は恥ずかしい。しかし、今回の騒動そのものについて、自分はかなり肯定的に受け止めている。


というのは、追い込まれたら恥ずかしい逃げを打つ連中はともかくとして、自分でもよく解らないままむやみに「公式発表」を盲信するのは決して褒められる事ではないし、専門家と一般人の間でなかなかない熱い対話*1が生まれたと考えるからだ。もちろん、後者は松浦氏の尋常じゃないマジレス努力の賜物と言える。ごく一例を挙げても

資料を一つアップします。

「●デブリ状物体の移動についてその3」では、明確な回答を出せなかったので、自分が考察に使ったデータを一部公開します。

動画像から問題のデブリが写った画像をフレーム単位で切り出し、連続したファイル名の高画質JPEGファイルにしたものです。画像系に強い友人に作成してもらいました。

http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/10/post-8e6d.html


まあ、ここまでやるかという…。今後の別の事例にまで同様の事を期待は出来ないが、まずは今回は彼の努力で生まれた成果である事は間違いない。


総合的に考えれば「まさかそんな大胆な事はしないだろう」とは判断しつつ、これまでの中国のネタを踏まえると、総合判断とは別に、万が一でもネタだったらとの一抹の期待は抱いてしまう心情は、自分は理解出来る*2。疑いを招くのは、信頼を築けていない中国にも責任はある。


彼らが「捏造」説に傾いた動機には中国に対する見下しが少なからずあると思われるが、彼らを叩く者達の動機にもやはり同様に彼らに対する見下しがあるように見える。彼らを叩いてる者達も、松浦氏の回答のすべてを最初から理解・認識していた訳ではないだろう。宇宙開発のような専門的な事に、一般人はもともと大した知識や認識がなくて当たり前だ。その上、情報ソースもルートも極めて限られている。今回については中国にとっての総合的メリットなどを考える事で判断可能な事象ではある。しかし、情報が限定的ソース/ルートのみで、さらに一般人ではその内容を判断するだけの知識がないとすれば、発表を無条件に鵜呑みにするのは健全な態度とは思わない。彼らを叩く者達やその周辺から、その事を指摘する声があまり見られなかったのは残念だ。これも、『「メタレベル」でなにか言って「偉くなった気になる」』人達の一種ではないかと。


専門家の仕事は、専門フィールドの中で事を成し遂げる事はもちろん、一般に向けてその知識を広めるのもまた重要な仕事だろう。ましてライターとなれば後者こそ使命である。啓蒙と言うのを嫌う人も居るが、一般人が知らなくて当たり前の事があるのは仕方ない。その意味で今回の騒動は水伝とは全く性質が異なる。今回の件は、松浦氏によるよい啓蒙事例と捉えられるべきだと思う。

*1:対立も対話のひとつっつー事で

*2:総合的な判断までそっちに傾くのはどうかと思うが、まあそこは平均的総合知力とか、本エントリの主張とは他の問題

小女子を魚というのが悪質という裁判官とそれを支持する者は、問題が全く見えていない

西野牧子裁判官は、実際の杉田被告の行為による書込み内容に比べるとやや滑稽な位に随分ヒステリックに断罪している。

西野牧子裁判官は「いたずらではすまされない卑劣な犯行。他人の痛みを想像しない無神経さは看過できない」として、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。(略)「『小女子』は魚だと不合理な弁解を繰り返し、反省がない」と厳しく非難した。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080929/trl0809291106001-n1.htm

ネット上で、被告にお灸を据えろ!と言う人でも、どこか違和感を感じるのではないか。どうやら彼女は、弁護士の怠慢により、検察の印象操作そのまんまに、実態を理解しないまま判決を出してしまったようだ。しかし、問題は彼女だけではない。この判決、ないし、彼の逮捕・処罰について肯定する人達は、彼女のような無理解はなくても、彼女と同様に重要な問題点を見過ごしている事に気付いていない。


彼の処罰を支持する人の見解は次の2点に集約される。

  • (A)いたずらでも他人に迷惑を掛ける事は悪い事である。
  • (B)もしも本当に実行されたらどうするんだ。

これらは、一般論としてなんらおかしい事ではない、まっとうな理屈だ。しかし、それがいくら極めてまっとうな理屈であっても、今回の「事件」の顛末を無視して、理屈を当て推量で適当に当て嵌めるだけでは、正しい判断は出来ない。


まず(A)。この「事件」での「他人への迷惑」とは、もちろん父兄が無用な心配をし、集団下校のような不要な行為を行うハメになった事だ。では、それはどうやって引き起こされたのか。それを一切無視して、無条件に被告に全責任を被せるのは公平ではない、事実を無視した不当な決め付けである。


では、事実はどうか。

引用者注:以下、本「事件」の書込みスレを抜粋。ただし、固有名は引用者が伏せ字にした。
明日午前11時に●●小学校で小女子を焼き殺す
1 :綾小路:2008/06/29(日) 18:37:12 id:CB7ROQQ+P
おいしくいただいちゃいます
2 :田中:2008/06/29(日) 18:38:50 id:x6yCcTER0
記念ぱぴこ
5 :田中:2008/06/29(日) 18:39:56 id:x6yCcTER0
http://www.edu.city.misato.saitama.jp/tangosho/
丹後小学校もありますので、このスレアウト
6 :綾小路:2008/06/29(日) 18:41:40 id:CB7ROQQ+P
な、なんだってー
7 :田中:2008/06/29(日) 18:43:30 id:toiCznQ0O
祈念

http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/heaven4vip/1214732232/

「綾小路」を名乗る被告がふざけて書き込んでいるのは一目瞭然である。他の者も、被告が逮捕されるかも、とは思っていても、被告が脅迫の意図ではなくただアホやっている、と言う見方をしているのが読み取れる。つまり、この時点では、件の小学校に危害が及ばない、ローカルな掲示板内部での戯れ言にすぎない。



しかし、事を嗅ぎつけたお約束の連中が集まってくる。掲示板を徘徊して赤の他人を逮捕に追い込む事を楽しみとしている、いわゆる「通報厨」だ。

10 :田中:2008/06/29(日) 18:46:54 id:oF8oDS3j0
とりあえず通報しとくわ
11 :田中:2008/06/29(日) 18:47:25 id:ww6DU3ASO
予告inからきますた
記念パピコ
20 :田中:2008/06/29(日) 18:56:10 ID:g/KDfyoX0
予告inのURL張れないのはなんでだwww
22 :田中:2008/06/29(日) 18:58:43 id:Qnykyibo0
予告inから来ました
記念ぱぴこ!

http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/heaven4vip/1214732232/

小学校児童の危険をまじめに心配する書込みは全くない。ただひたすら馬鹿やった被告を嗤い、被告の人生崩壊を嬉々として煽り舞い上がるばかりだ。その彼らの根城はここ。

小女子を焼き殺す』と予告をしています。
下記、予告内容の転載です。

http://yokoku.in/detail?num=1132&s=65

として、該当書込みのみを切り出して掲示。引用では伝わらないが、掲示は黒い背景におどろおどろしく表示され、元の書込みのアホな雰囲気とは全く異なるページになっている。


もちろん、ここにもまともな人がいないわけではない

1: 2008-06-29 19:26:55 ID:10
書き込んだ本人が謝罪しているようですね。
単なるイタズラで終われば良いですが・・・

http://yokoku.in/detail?num=1132&s=65

他にも、警察や通報厨を非難する書込みもある。しかし「通報厨」の反応はこうだ

9: 2008-07-16 17:33:37 ID:Ef
てーことは?
金バエ確実アウトwwwwwwwww
10: 2008-07-16 17:51:47 ID:lm
金バエよ
今日は震えて眠りな(ーーー)
26: 2008-07-16 21:06:55 ID:rz
杉田ドンマイ!!拘置所の中で小魚食べて、カルシウム不足を補ってねー
出てきたら、杉田ドンマイの拘置所日記よろしくねー

http://yokoku.in/detail?num=1132&s=65


子どもの心配など全くしていない。被告の書込みから「危険性」を読み取っている物は皆無である。ただひたすら被告が苦しむのを喜んでいるだけだ。それを受け、被告の書込みは勢いが無くなっていく。

43 :綾小路:2008/06/29(日) 19:16:53 id:CB7ROQQ+P
小女子(こおなご) イカナゴの別名。
イカナゴ(玉筋魚、?子 Ammodytes personatus)は、スズキ目 イカナゴ科の魚類。 形がカマスに似ていることから、「カマスゴ(加末須古)」と呼ば
れることもある。稚魚は地方により「コオナゴ(小女子)」、「シンコ(新子)」と呼び、成長したものを「メロウド(女郎人)」、「フルセ(古背)」と呼ぶ。九
州では「カナギ」と呼ばれる。北方系の魚であるため夏には砂に潜って夏眠を行うが、夏眠に適した粒度分布の海砂がコンクリートの骨材にも適し
ていたため瀬戸内海のイカナゴ夏眠水域の海砂が建設資材として大量に採取され、瀬戸内海の多くの漁場が壊滅的被害を受けている。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5f/Ikanago_1.JPG/250px-Ikanago_1.JPG
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%82%B4
48 :綾小路:2008/06/29(日) 19:22:12 id:CB7ROQQ+P
ごめんなさい
こんなことになるとは思わなかった
実際にやるつもりは無いです

間抜けだ。だがそう言えるのは、それが赤の他人の事だから問題をまじめに考えていないだけだ。自分が、他者がねじ曲げて情報を伝えた事によって誤解を生み、その誤解に基づいて自分が逮捕される事を想像する事が出来ていないだけだ。誰ひとりとして、まじめに件の書込みが本当に行われると考えている者は居ない。そう、書込み自体に危険がないのは明白なのだ。


ではどこで被告が行った書込みに元々存在しなかった「危険」が発生したのか。言うまでもない。情報の伝達の過程で「危険」が付加されたのだ。つまりは、伝達による情報の歪みによる誤解で「危険」が発生したのだ。とすれば、無用の「危険」を発生させて、父兄や教師に迷惑を掛けた者達の責任は一切不問で、危険がない書込みをした被告が逮捕/処罰を受けるというのは、まったく筋が通らない。

「(A)いたずらでも他人に迷惑を掛ける事は悪い事である。」その通りである。危険を捏造して迷惑を掛けた者は、被告を陥れるという「いたずら」の軽い気持ちだったに違いないが、だからといって他人に迷惑を掛ける事が許されるわけではないのだ。


こう書くと、「いやいや待て」という人達がいる。危険がない、掲示板内部での戯れ言、といっても「(B)もしも本当に実行されたらどうするんだ。」と。上記の事実をよく見て頂きたい。現に、その場に居合わせた者達が、誰も子どもの心配なんてせずに、危険も感じていない。だれでも素直に読めば、アホがアホなネタで自爆しただけと理解出来る。集団登下校の原因は、情報伝達の過程で付加された「危険」によるのであって、元の書込み自体には「危険」はない。


それでも一部の人達は、逮捕/処罰が正しいという結論ありきの見方になっていて、上記の過程を素直に見る事が出来なくなっている。ひたすら「もしも!」と存在しない危険を訴える。たしかに理論の上だけなら否定は出来ない。だが、そういう悪魔の証明的な詭弁を弄する人には、以下の極端な例*1に論理的に答えて頂きたい。論理上危険0を証明出来ないと拘る人は、その極端な理屈によって株式会社はてなを人食いの殺人集団として直ちに警察に通報しなくてはならない。

には、「インターネットを使うとんな楽しいことがある」「こんな便利なことがある」が形になったサービスがいっぱい。いったんはてなユーザーになれば、全てのサービスすぐ無料で使うことができます。

オンラインコミュニティとし国内最大級のユーザー数を集めるはてなには、毎日たさんの人が訪れていますので初めて使方も安心。ぜひ一度はてなの世界を体験してください。

http://www.hatena.ne.jp/what

「馬鹿か。そんなの読む側の勝手な曲解だろ。どこに危険があるんだ。常識で考えろ」って?

その通り。「否定しきれない」を繰り返すだけの悪魔の証明の論理では、こういうアホな話になるのだ。

あなたが常識を無視して無心に「もしも!」を唱えて無理に曲解するのでなく、常識にしたがって書込みの危険性を判断すればよいのだ。事実として、その場で目撃した者は皆常識的な危険の判断を出来ている。


最後にまとめると、本件の何が問題かと言えば、元書込みではなく、情報の伝達の過程での誤解によって生じた「危険」を、誤解のまま発言者に責任を被せる所に問題がある。この問題で表現の自由を持ち出す事を嗤う人がいるが、それは見方が表面的でその意味を勘違いしているのだろう。アホなイタズラをどんどんさせろと言っているのではない。そう言う人は、警察・検察の思うがままの「誤解」によって発言者を逮捕処罰できるという事が、表現の自由にとって如何に危険な事であるか、まじめに考える必要がある。

補足。プロでも間違えるのだから、我々一般人はよくよく問題を吟味する姿勢が必要

秋葉原事件は誰もが許し得ない悪質な犯罪だ。決して再発させてはならない。だが、そこで一歩間違えると、プロでもおかしな事を言いだす。

100件の殺人予告のうち、1件でも実行されたら、実行されない全ての殺人予告も、現実的危険性のある殺人予告としての意味を持ちます。つまり、深刻な不安感や恐怖感の原因となります。
秋葉原事件によって、すでに1件実行されてます。一罰百戒の逆の現象が生じていることになります。

そのような状況で同種事犯の防止効果を最大限に発揮させるためには、検挙された1件に対して厳罰をもって望むことは十分合理性がありますし、それを強調して周知させることが必要です。

http://www.yabelab.net/blog/2008/09/28-135429.php

彼は、検事出身の弁護士である。前職の思考習慣が抜けていない*2。彼がおかしな事を言っているのが解るだろうか。


決して再発させてはならないのは、秋葉原事件のような凄惨な殺人とその恐怖である。アホのイタズラではない。あの凄惨な殺人と、なんの危険もないアホのイタズラを同列に考えるのは、間違った正義感の暴走である。あの凄惨な事件を防ぐには、警察は危険がないアホのイタズラに無意味なリソースを割いて無意味なポーズを取るよりも、もっとまじめに再発防止の対応に力を注ぐべきである。加藤の書込みは、アホのイタズラとは質的に全く異なるものであるし、だいいち、事前表明ばかりを取り締まれば、第2の加藤は、加藤のように無警戒に事前表明をせずに犯行に及んでより危険が高まるのは自明である。

追記

情報伝達の恐ろしさ

TBで、

ついで
豊川信用金庫事件 - Wikipedia
聞き間違いから始まったのでケースが違うけどなんか似てると思った。

http://fbis.g.hatena.ne.jp/fbis/20080930/p1

という指摘があった。今回の事件との相違点を全て捨象は出来ないが、wikipedia:豊川信用金庫事件において、結果として多くの人に多大な恐怖と迷惑を掛けた友人B・Cは、その全責任を負って断罪されるべきであろうか?
とくに「明日にはシャッターはもう開かない」と言って回った者は、断罪する資格があるのだろうか。

逮捕処罰を肯定する人の典型例

罪状は威力業務妨害なのです。で、実際に集団下校するなどの実害が出ているわけです。
(略)一連の流れを見ても、騒ぎを起こすことを想定しているようなので、一体どうして業務を妨害する気がなかったということができようか。

http://d.hatena.ne.jp/lastline/20080930/1222739408

上記はぱっと見では至極妥当な話に見える。しかし肝心の点を誤解し、さらに重要な点を見落としている。


まず、被告は「通報しないで」と言っている通り、今回迷惑を受けた学校や警察を騒がす意図は持っていない。通報して貰わなければ、学校も警察も騒がす事が出来ないのだから。なのにそれを大雑把に「イタズラしたんだからそういうつもりだったんだろう」適当に決め付けて断罪するのは正しくない。そのうえ、「迷惑」の発生機序に意識が及んでいない。情報伝達過程で「危険」が生じ、それによって「迷惑」が発生したのが事実である。それを大雑把に「イタズラしたんだから迷惑が起きたんだろう」と、勝手に事実を単純化しては、正しい判断は出来ない。

著名で聡明なlastlineさんですら、この問題をちょいと見しただけでは、適切な認識を持たずに誤った意見を持ってしまうという好例だ。

逮捕処罰を肯定する人のひどい例

ギャグでやったつもりが懲役1年と6か月。
ざまあwwwwwwww
代償はかなり高くついたな。
「コウナゴ」の言い訳をしなければもっと刑期が短かっただろうに、自ら刑期を長くするよう自爆しましたねw
(略)
体を張ったギャグ、乙であります!!!

http://blogs.dion.ne.jp/calcio/archives/7643239.html

とうていまともに児童の心配や社会の安全を願っているようには見えない。今回の逮捕処罰を肯定する人には、他人が人生を破壊されて煩悶するするのが愉しくて愉しくて、という人がいる事実を、一般の人には知っておいて頂きたい。(引用ページのコメント欄の言葉が通じる事はないだろうな…)。

はてブにレス

2008年09月30日 angmar 通報をした人間の意識がどうあれ、危険を感じたのは子どもの親たちだということもまだ理解できないのかな

http://b.hatena.ne.jp/angmar/20080930#bookmark-10210141

意識の問題ではなく、事実として、子どもの親たちが感じた「危険」を作り出した人が、被告以外の人間であると言う事を理解出来ませんか?

2008年09月30日 xevra 「危険がないのは明白」「なんの危険もないアホのイタズラ」が意味不明。社会にまともに参加していないネトヲタなら「犯行表明しちゃったし裏をかいて何かイッチョやってみるか!」と思っててもおかしくない

http://b.hatena.ne.jp/xevra/20080930#bookmark-10210141

でしたら、エントリの中盤で書いた予告をしている株式会社はてなを早く通報して下さい。ウンコをタッパーにホントに入れて「ばらまく」とか言う気違いの友人が働いていたような変な会社ですよ?

2008年09月30日 te2u たとえ予告が冗談であっても、受けた側にとっては事の顛末なんて見ていられない。だから、自警するだろうし、警察にも通報する。/危険と感じるのは読み手。読み手が危険と感じてしまえばそれまで。

http://b.hatena.ne.jp/te2u/20080930#bookmark-10210141

まず、「読み手」とは具体的に誰でしょうか?そしてその読み手が見る情報はどういう情報でしょうか?情報の伝達過程を無視して、肝心の「危険」の発生過程から目を逸らしては、父兄・教師の立場にも立っていませんよ。発言者を処罰するのが読む側の解釈の自由だと仰るなら、下記の思考実験はいかがでしょうか。

  • 「コロす」という方言が「笑い転げさせる」という意味を持つ地方があり、
  • その地方出身者が集って<追記>方言丸出しで語り合う掲示板があり、
  • <追記>最近の予定を雑談する会話の流れのなかで
  • その地方出身<追記>でこの掲示板の常連のお笑い芸人が
  • 「明日□□の●●小学校さ行っで、子ども達全員コロしてやるわw」と発言した場合、

掲示板に認証が掛かっていなければ)そのお笑い芸人は逮捕され処罰されるべき、とお考えですか?

2008年09月30日 chnpk 水面に石を投げたら波が立つのはあたりまえで、投げるやつが悪い。水面に罪はない

http://b.hatena.ne.jp/chnpk/20080930#bookmark-10210141

一見綺麗な例え話ですが、wikipedia:豊川信用金庫事件において、結果として多くの人に多大な恐怖と迷惑を掛けた友人B・Cは、その全責任を負って断罪されるべきででしょうか?とくに「明日にはシャッターはもう開かない」と言って回った者は、断罪する資格があるでしょうか?

2008年09月30日 Kirito ネットのローカルルールを司法に押し付けようなんておこがましいとは思わんかね

http://b.hatena.ne.jp/Kirito/20080930#bookmark-10210141

「ネットのローカルルールを司法に押し付けよう」というような事はどこにも書いていませんよ?ネットでなくてリアルで起きたとすると逆にもっとこの問題が解りやすくなると思いますよ。上記の、wikipedia:豊川信用金庫事件で、友人B・Cは断罪されるべきと思いますか?

2008年09月30日 YOSIZO 被害者の視点は?原因はどうあれ避難した児童や警察や子供のお迎で会社を早退した親に「あれは冗談ですからw罪に問うような事じゃないですよ」と言えるのか?

http://b.hatena.ne.jp/YOSIZO/20080930#bookmark-10210141

「原因はどうあれ」って、事の因果関係を無視して適当にでも「犯人」を決め付けてしょっ引けと?被害者が怒るべきなのは、存在しない危険を存在するとイタズラで捏造する事で彼らを騙した者達に向けられる必要があるのに、その彼らの存在がない事になっているのが問題なのです。

2008年09月30日 lisagasu 悪質な悪戯を「ただのアホ」みたいに甘くとらえる感覚が嫌。掃除をさぼってふざけた男子の投げた雑巾が顔にあたって女子が泣いたら、楽しいアホがわからないヤツってムッとする男子いたでしょ、そんな感じ

http://b.hatena.ne.jp/lisagasu/20080930#bookmark-10210141

いや、今回の問題は、男子が明後日の方向に投げた雑巾をファインプレーでキャッチして女子の顔に命中させた中継者が居たのに、その中継者が居ない事になっている事が問題なんですよ。

まだ、元の書込みそのものに「危険がないと言えない」という人は

株式会社はてなをはやく通報して下さい><。花子さん危ない!

*1:この辺は、ちょっと追記してます

*2:検事にあっては、被告の正当な権利などどうでも良く、彼を処罰する事で社会の安全を目指すのが職務であるのだから

毎日の報告が、目くらましで肝心の点を誤魔化し責任逃れをしている件

ようやく、報告が出てきた。そこそこの分量があり、読んでいくと「ほう、ちゃんと調べたんだなぁ」となんとなくウヤムヤな気持ちになって、「これで一件落着かな」という気持ちになってしまいかねない。

「変態ニュース」毎日新聞3ページに渡り謝罪 外部の警告放置「深刻な失態、痛恨の極み」

http://www.j-cast.com/2008/07/20023815.html

J-Castまで釣られる始末。

だが、とんでもない。それは孔明の罠だ。落ち着いてよく読めば、この報告が内容的に論外であって分量による目くらましの責任逃れでしかない事が明らかになる。

 皆様からいただいた多くのご批判、ご意見や内部調査で分かった問題点、有識者による「開かれた新聞」委員会の指摘を踏まえて再発防止のために次の措置を講じることにしました。

 8月1日付で「毎日デイリーニューズ」を新体制に組み替え、新編集長の下で9月1日からニュース中心のサイトに刷新します。新たに社説や「時代の風」など著名人による評論を翻訳して掲載し、海外の日本理解を深めるべく努めます。同時に西川恵専門編集委員を中心にベテラン国際記者らによるアドバイザリーグループを新設し、企画や記事の内容をチェックする体制をとります。

http://www.mainichi.co.jp/home.html

上記に引用した措置は、当然だ。イカレタ記事を発信していた組織を改善しないなんてあり得ない話なのだから、これは大前提に過ぎない。重要なのは、そこから先だ。

問題の報告で重要なのは、

  1. 今回の件に関連して、潜んでいた問題をどう対処するのか
  2. 原状回復(起こした被害を、可能な限り元に戻す事)
  3. 潜んでいた問題を含めて、それぞれの責任をどうするのか。

今回の件に関連して、潜んでいた問題をどう対処するのか

毎日新聞は、WaiWaiの件に潜んでいた問題を自らこう総括している。

■チェック機能に欠陥
■品質管理体制の不在
■記者倫理の欠如
■英文サイトへの認識不足
■批判への対応鈍く

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_05.html

この総括にも漏れがある気もするが、それはまずは置く。上の4つは、上記の措置が対処と言う事だろう。では、一番最後の「批判への対応鈍」への対策はどこへ行ったのか?

 昨年10月、米国在住の大学勤務の日本女性から内容を批判する英文メールがデジタルメディア局に届いている。(略)
 今年3月にも国内在住という人から日本語で「WaiWai」の内容に疑問を投げかけるメールが届いたが、同様に顧みられることはなかった。(略)

 この2本のメールの内容は、記者だけでなくデジタルメディア局内の他の人にもメールで知らされた。そのリストには局長や局次長、部長ら幹部も含まれていた。

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_03.html

昨年10月から、外部指摘を放置して、2chで大々的に叩かれ出してやっと思い腰を上げたわけだ。それなのに、その対策がないとは一体どういう事なのか?

さらに、毎日は、こうした自浄作用の無さに対する担保として、

社外の有識者でつくる第三者機関「『開かれた新聞』委員会」に見解を求め紙面で報告します。

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0707.html

のように、社外有識者の「『開かれた新聞』委員会」を置いているようだが、その頼みの綱の委員が言う事はこうだ。

 私は数年前からネットの負の側面に警鐘を鳴らしてきたが、今回の件はネット社会の落とし穴がどこに隠れているかわからないことを示唆するものだ。ただ、失敗に対する攻撃が、ネット・アジテーションによる暴動にも似た様相を呈しているのは、匿名ネット社会の暗部がただごとではなくなっていると恐怖を感じる。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_08.html

自浄作用がなく外部指摘をずっと黙殺して、ネットで叩かれないと動かなかったと言う問題を前にして、頼みの綱がいうのは「ネットが悪い」。「ネット・アジテーション」に問題があるとして、今回それがなければ改善されなかったのだから、今回の件では功を成したわけなのだが、結論は「ネットが悪い」。

これは、もう救いようがないのではないか?改善できる理由がないではないか。被害を被る人も出るかも知れないが、責任の大きさを考えて、こんな改善の見込みがない危険な会社は解体するのが妥当ではないだろうか。


原状回復(起こした被害を、可能な限り元に戻す事)

今回の報告で、全く前面に出てきていないうえに、申し訳程度に「判明すれば、事情を説明」と受け身的曖昧記述。この手の受け身的な曖昧記述は、実質的な明確な対策対処を取らないと言う事だ。ほかは詳細をダラダラ書いて、「お詫びします」という火消し的文言ばかり前面に出して、肝心の被害の回復をないがしろにしているのは、結局の所、この報告の主たる目的が、単なる自己保身である事を雄弁に物語っている。


潜んでいた問題を含めて、それぞれの責任をどうするのか。
経緯報告の中では、問題の現役員を含めた上司の不作為の問題に言及している。すなわち、現役員・現社長には名目だけではない、実務的責任があった事を示唆している。

検証踏まえ2人追加処分

http://www.mainichi.co.jp/20080720/0720_06.html

発覚時だけでなく、歴代の担当幹部も処分というのは評価出来るが、内容は「役員報酬20%(1カ月)返上」。彼らの責任感はその程度と言う事だ。

そしてなにより、強く批判されていた「昇格処分」についてまったく触れず、また昇格の取り消しも、処分の強化もなし。

さらに言えば、もっとも強く批判された「社長昇格処分」の対象である朝比奈氏について、この報告は全く切り込んでいない。調査班とて社員であるから、結局、この報告は、社内力学の産物でしかなく、最高権力者として君臨する社長は無傷で高笑いと言う事だ。

結局の所、この報告書は、毎日には自浄作用がなく、責任感もなく、救いがない危険な組織であると言う事の証明となっているのが読み取れる。

結言

とまあ、ちょっと厳しめに追求したが、これは、私が尊敬してやまない、社会正義を厳しく追及する新聞社の顰みに倣ってみたものだ。その新聞社の名前は、毎ナントカと言ったが、失念した。